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籠の鳥

 「出るに出られぬ籠の鳥」大きな字でそう書いてある短冊を見つけた時のショックは、今でも忘れられない。開園して一年ほどたった昭和五十三年の夏、施設の運営もやっと軌道に乗りつつあると思っていた矢先のことである。
~中略~
 もちろん、はじめのきまりを作ったときには、お年寄りを束縛しようなどと考えた訳はない。
ただただ、安全に、行き届いた管理が出来るようにと、お年寄りのためにと思って一所懸命に考えたつもりである。しかし、そう考えていたつもりで作り上げたきまりは、管理する側から見て都合良く、簡単に安全を得ようとしたものだったのだ。
 今となっては、どうしてそんなことを禁止していたのか不思議なくらいだが、酒やたばこは自由に楽しんでもらうようにしたし、外出も家族、または家族同伴であれば、いつでもどうぞとなった。要するに、ほとんどの決まりはなくてもよいものだったのだ。

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